ドラフトから一夜…虎カラーのウェアで練習「たまたま黄色だっただけ!」
ドラフト会議から一夜明けた10月12日。奈良県五條市にあるグラウンドを訪ねると、鮮やかな黄色のウェアで体を動かす姿が目に飛び込んできた。「たまたま黄色だっただけですよ!」。阪神から4位指名を受けた智弁学園の前川右京外野手は、早くもプロの世界に向けたスタートを切っていた。浮き足立つ様子は一切なく、プロでの理想像を語った。
前川にとって、甲子園球場はこれまでも本拠地同然。初めて足を踏み入れたのは高校1年の夏だった。それから通算4大会、計11試合を戦った。準優勝した今夏、日本航空との3回戦では「打ちたかった」という左中間への本塁打も放った。左打者にとって、浜風を利用した逆方向へのあたりは甲子園で戦う重要なポイント。最後の夏に一発を放っても、前川の課題は変わっていなかった。
「逆方向に打てていたら、もっとヒットになったのになというのが沢山あったんですよね。外角を強引に引っ張っていく癖があるので、そこを逆方向に大きな打球を打てるようにしたいです」
身長176センチ、体重88キロの左投げ左打ち。特別大きいとは言えない外野手は、これからチームの先輩になる選手をお手本にしたいという。「中野選手とか近本選手とか、逆方向へ運ぶのがすごく上手いと思います。そんなに体が大きくないのに、普通にホームランを放ったり、長打を打ったりする姿を見るので、やっぱり力だけじゃないなっていうのが分かります」。身長171センチの左打者、近本光司外野手と中野拓夢内野手の名を挙げた。
高校通算37本塁打。「阪神の左打者は?」との質問にはすぐに「金本(知憲)さん」と答える。しかし、現時点で目指すのは本塁打王でなく「首位打者」。“阪神・前川右京”として、どんな打者になっていくのかは「見つめ直したい」という。
「智弁学園の前川右京はガンガン振って、来た球を強く振るっていう感じです。高校時代は高校時代で、次はゼロからのスタート。もう1回、自分を磨いて輝けるように頑張りたいです」
まだドラフト指名から20時間ほどしか経っていなかったが、すでに次のステージを見ていた。「キャッチボールひとつにしても、少しでも上のレベルの状態で行きたい。打つにしても、守るにしても、体作りにしても、全部力入れていきたいなと思います」。前日までと同じ練習でも、より意識を高く持つ。
「活躍しても、謙虚である人が長く活躍できると思います。いくら活躍したとしても、自分が出来ることやっていきたいです」。足元を見つめつつ、虎党には「『右京』って呼んでほしいです」と少し照れくさそうにオファー。わずかに伸びた髪がまだまだ18歳であることを思わせるが、指名を受けた安堵感よりも、プロ野球選手として生きていく覚悟を感じる。“阪神の右京”になる準備はすでに整っている。
(市川いずみ / Izumi Ichikawa)
市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。
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