<背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論>
来季4年目を迎える矢野阪神が、17年ぶりのリーグ制覇に必要なものは何か? 日刊スポーツ評論家陣が提言する「背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論」。第2回は阪神一筋22年、4番や代打の神様として一時代を築いた桧山進次郎氏(52)が、4年連続両リーグ最多失策の改善は絶対に不可欠と力を込めた。
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タイガースは昨年開幕でつまずいたことを肝に銘じて、開幕ダッシュを決めましたが、実は結構な数のエラーがありました。前半戦は好調な攻撃力でミスの分を帳消しにでき、目立たなかっただけです。でも後半戦打てなくなった時、巨人とのクライマックスシリーズが象徴的だったように、失策が負けにつながる試合が増えました。4年連続両リーグ最多を記録した86失策だけでなく、記録に表れないミスも目立ちました。
土で天然芝の甲子園を本拠地にしている以上、エラーは多いでしょう。でも他のチームは甲子園に来ると、たくさんエラーしていますか? だから全く言い訳はできません。打線は水物でいい投手は打てませんが、最も計算できるのが守備力です。野球にエラーはつきものですが、同じミスでもタイガースは準備不足、軽率なミスが多々ありました。それらを減らせば、相当な数のエラーが減ります。
指導者の取り組みも大事ですが、僕は選手の意識改革が一番重要だと思います。打撃は打てなくても自分の成績に返ってくるだけですが、守備は1つのミスで一生懸命投げている投手や、必死に考えてサインを出している捕手に迷惑がかかり、いやな負け方にもなる。投手の白星を消したり、降板させたり、給料やキャリアにも影響します。そういうふうに仲間を思い、考えを改めると、練習への取り組みも変わると思います。
投手も野手の練習を見ています。野手がどういう姿、振る舞いで取り組んでいるか。アイツがエラーしたら仕方ない。一生懸命やってるからと思われるチームにならないと。明るく楽しくは大事だけど、ずっと笑顔を見せながら練習するのは違う。人間なので“心”がありますからね。心を動かすような練習をしてほしい。もちろんしているでしょうけど、“薄いな”と感じます。そういう部分がここ数年、シーズンを通して出ているのではないかと。
意識改革を徹底して、1球に対する執着力、集中力を養えば失策も60個ぐらいまで減らせると思います。具体的な1つの方法は、試合本番を想定した練習です。キャンプでは試合形式の練習を増やしたい。ノックは1球1球、実戦のワンプレーを想定して打ってもらうのも手です。たとえば内野が得点差なども想定した一、三塁、前進守備など、場面をイメージした打球を打ってもらって、技術も判断力も養う。そのあとは守備位置まで歩いて帰ってもいいです。ゆっくり息を整えて、緊張感を高めてよし、2本目いくぞと。外野も同じです。練習でできないことは試合でできません。
タイガースの戦力は、他球団にはうらやましいぐらいあると思います。守備さえ改善されれば、優勝できる力がある。今季は結果的にあの1試合、あの1球、あのワンプレーが…となりました。悔しさを前面に出してやり返してほしいです。
▼4年連続12球団最多失策の阪神は、本拠地甲子園での今季失策数が62試合で44。1試合平均0・71個で、3試合で2個以上出るペースだった。土のグラウンドのため失策は多くなる傾向があり、人工芝球場を本拠地とする球団より不利ともいえる。ただ、セ他球団の今季甲子園での1試合平均は、試合数が少ないとはいえDeNA以外は阪神を下回った。18年62試合37個、19年62試合45個、20年57試合49個という甲子園での失策数を減らすことが、課題のひとつとなる。
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